玉掛け作業に必要な力学~荷重(速度)~
君たち、お盆休みはゆっくり過ごせたかい?
僕は暑いのが苦手だから、家でゆっくり過ごしていたよ。
ずっと家にはいたけれど、ちゃんと夏を楽しんだよ。
高校野球を見て、お昼にそうめんを食べて、昼寝して、おやつにスイカを食べて、、、
ほら、夏っぽいでしょ。
さて、ここから本題に入るよ。
玉掛け作業には「力学」の知識が必要なことは知っているよね。
今日は、玉掛け作業に必要な力学の中の1つ「荷重」について紹介していくよ!
「荷重」って玉掛け作業では、よく聞くし、よく使うよね。
例えば、「使用荷重」とか「荷重をかける」とか!
まず、その「荷重」がどんな力かというと「物体に外部から作用する力(外力)」のことだよ。
単純に「力」って考えても問題ないよ。
荷重は、「かかる速度」や「かかる向き」によって、いくつかの種類に分類することができるんだ。
「かかる向き」による分け方は、以前紹介してことがあるから
今回は、「荷重のかかる速度による分け方」を簡単に説明するよ。
まず、静止状態でかかる荷重なのか、時間とともに変化する荷重なのかによって
「静荷重」と「動荷重」の2つに大きく分類することができるんだ。
静荷重
テーブルの上に物を置くと、テーブルや床に荷重がかかるよね。
この荷重は、時間がたっても常に一定だよ。
この静止状態での荷重の事を「静荷重」と言うんだ。
玉掛け作業でいうと、移動式クレーン機械本体の自重や、荷を吊り上げて静止した状態のような荷重を指しているよ。
動荷重
反対に「動荷重」は、時間とともに荷重が変化するものだよ。
動荷重は、どのように荷重が変化するのかによって「繰り返し荷重」「衝撃荷重」と
さらに細かく分類されるんだ。
衝撃荷重
衝撃荷重は、急激に作用する荷重だよ。
テーブルの上に勢いよくドンっと物を落とすと、瞬間的に荷重がかかるよね。
この瞬間的に短い時間内に発生する荷重の事を「衝撃荷重」というよ。
玉掛け作業でいうと、荷を巻下げている時の急停止とか、
荷をつり上げる際、玉掛け用ワイヤロープがゆるんでいる状態から高速で巻上げるような時に、衝撃荷重が生じているよ。
この衝撃荷重は、荷の重さよりはるかに大きな力が作用するから、玉掛け用具の破損に繋がる可能性があって危険なんだ!
だから、玉掛け用具のJIS規格や説明書を読んでみても、
「衝撃荷重はワイヤロープの切断事故につながりやすいことを十分認識しておくこと。」
「衝撃荷重が作用しないようにすること。」と書いてあることがあるよ。
どのくらい危険なのか、ちょっと計算してみるよ。
10mのワイヤロープ使用時に、500㎏のつり荷が1m落下した場合。
落下距離:1m
ロープの長さ:10m
つり荷の荷重:500㎏
まず、ロープの長さに対する落下距離の割合(%)を、下の式で求めるよ。
落下距離(mm) ÷ ロープの長さ(mm) × 100
1000÷10000×100=10%
落下距離の割合が10%とということが分かったね。
その落下距離の割合を使って、下の表から「つり荷重の増加」を確認するよ。
落下距離の割合が10%の時は、つり荷重の増加は10倍と書かれているね。
つり荷の荷重500㎏の10倍は、5000㎏!
つまり、ロープには5000㎏の荷重がかかるという計算になるよ。
衝撃荷重が危険って事が分かってくれたかな?
繰り返し荷重
繰り返し荷重は、荷重の大きさの変化が、繰り返されるような荷重の事だよ。
クレーンのワイヤロープやウィンチの軸受などが受ける荷重が当てはまるかな。
繰返し荷重によって荷重を受ける部分は、静荷重よりも小さい荷重でも、徐々に損傷を受けて、最終的に破断することがあるんだ。このような現象を材料の疲れによる破壊(疲労破壊)というよ。
例えば、シーブを通過するワイヤロープ!
このワイヤロープは繰り返し曲げ荷重を受けているんだ。だからワイヤロープの素線は繰り返し荷重によって断線していくよ。
まとめ
・静荷重→静止状態での荷重の事
・動荷重→時間とともに荷重が変化するもの
衝撃荷重→急激に作用する荷重
繰り返し荷重→荷重の大きさの変化が、繰り返される荷重
君たち、今日も一日ご安全に!
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