ワイヤロープもラウンドスリングも曲げすぎ注意(D/dとD/t)

突然だけれど、

ワイヤロープのD/d(ディーバイディー)、ラウンドスリングのD/t(ディーバイティー)

って聞いたことあるかな?

両方とも「折り曲げによる強度低下」についての用語なんだ。それぞれ説明していくね。

 

ワイヤロープのD/d

ワイヤロープのD/dは、

ワイヤロープに組み合わせるシーブや玉掛け用具の直径(D)とワイヤロープ径(d)との比を表しているよ。

 

この比が小さいほど、ワイヤロープの折り曲げがきついということは分かるかな。

折り曲げられた部分の強度は、真っ直ぐな状態のワイヤロープよりも低下し、

折り曲げがきついほど、その分強度が低下するんだ。

上の表は、折り曲げによるワイヤロープの強度低下率を表しているよ。

※強度低下する割合は、ロープの構成によっても異なるよ。

 

この表は、ワイヤロープが本体部分で折り曲げられた場合ってことなんだ。

あまり、本体で曲げが発生するような吊り方はしないと思うけれど、

例えばクレーンフックに本体部をかける「半掛け吊り」のときには、表を使って減率を考えないといけないよ。

アイ部分でも曲げは発生するけれど、2本になっているから大丈夫だよ。

 

ちなみにDは、シャックルの場合、だいたい下の絵の2箇所のどちらかだよ。

 

1回、上の絵①で計算してみよう。

絵のワイヤロープは真っ直ぐ垂直に下りているように見えるから、今回張力増加係数は考慮しないよ。

①ロープの構成が、6×24

②ロープの破断荷重は、45.8kN

③ワイヤロープ径(d)は、10

④ワイヤロープに組み合わせるものの直径(D)は、50

だとすると、50 ÷ 10 でD/dは5倍。

ロープの構成6×24で、D/dが5倍の場合、強度低下率は30%。

 

強度低下を考慮した使用荷重を求める式は、こんな感じ。

(ロープの破断荷重 × 吊り本数(今回は2本計算)) ÷ 安全率 × 強度保持率(1 – 強度低下率)

※玉掛け用のワイヤロープの安全率は6倍以上

 

上で分かった強度低下率を式に当てはめると

(45.8kN×2)÷6×(1-0.3)

=91.6÷6×0.7

=10.6kN

この場合の使用荷重は、10.6kNということになるよ!

 

ラウンドスリングのD/t

ラウンドスリングのD/tは、

ラウンドスリングに組み合わせる玉掛け用具の直径(D)と荷重を掛けたときのスリングの厚さ(t)の比のことだよ。

この比が小さいほど、強度が低下するんだ。

 

 

さっき説明した、ワイヤロープのD/dとは、ワイヤロープ径かスリングの厚さかの違いだね。

 

ラウンドスリングの場合は、D/tの値は4以上が望ましいとされているよ。

ただ、両端アイタイプの場合は注意が必要で

Dが逆に大きすぎると、アイの開きが増して縫製部をはく離させようとする力が働くんだ。

だから、両端アイタイプでアイ部分に玉掛け用具を連結する時、

Dはアイの長さの1/4以下とすることが望ましいよ!

 

 

ラウンドスリングのD/tを考慮した強さ保持率の表は、

こんな感じで、芯体の素材によって変わってくるよ。

出典: 社団法人日本クレーン協会規格JCAS 6801-2008 ラウンドスリング使用マニュアル

 

ワイヤロープとラウンドスリング、

どちらも曲げすぎたら強度が低下するっていうことが分かってくれたかな?

今日も一日ご安全に!